「日本語教師って、具体的にはどんな仕事をするの?」
日本語教師を目指している方の中には、そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
私も日本語教師になる前は、「日本語を教える仕事」ということはわかっていても、実際に授業の前後にどんなことをしているのかまでは、あまりイメージできていませんでした。
実際に働いてみると、日本語教師の仕事は、教室で学生に日本語を教えるだけではありません。
授業の準備や教案作成、教材作成、宿題のチェック、採点、教師同士の情報共有など、授業の裏側にもさまざまな仕事があります。
この記事では、私が日本語学校の非常勤講師として実際に経験した仕事を中心に、日本語教師の仕事内容を紹介します。
日本語教師の一番大きな仕事は「授業」
日本語教師の中心となる仕事は、学生に日本語を教えることです。
私が日本語学校で担当していたのは、ゼロ初級・初級・中級のクラスでした。
1クラスは20人ほどで、1コマ45分。
担当した授業は、
- 文法
- 会話
- 読解
- 作文
- JLPT対策
などです。
教科書は主に『みんなの日本語』を使い、JLPT対策の教科書なども使っていました。
ただ、教科書があるからといって、ページを開いてそのまま説明すれば授業ができるわけではありません。
「この文法をどう説明したら学生に伝わるかな?」
「どんな練習をすれば、実際に使えるようになるかな?」
と考えながら、授業を組み立てていきます。
そこで必要になるのが、次に紹介する「教案作成」です。
教案というのは、「その日の授業を、どのような順番で、どのように進めていくのか」を綿密に計画した設計図(タイムスケジュール)のことです。
授業のための「教案作成」
日本語教師になったばかりの頃、私が一番苦労した仕事の一つが教案作成でした。
私の場合、授業の教案は基本的に一から作っていました。
最初の頃は、1回の授業の教案を作るだけで何日もかかることもありました。
「45分の授業なのに、こんなに準備が必要なんだ……」と驚いたことを覚えています。
教案を作るときに考えていたこと
例えば、新しい文型を教える場合、まずその文型そのものを勉強します。
そして、
- これまで勉強した文型との違い
- 似た文型との使い分け
- 学生が間違えやすいポイント
- 学生から出そうな質問
- わかりやすい例文
- 知らない単語の説明方法
- 文型を使う練習方法
- 学生同士でできる活動
などを考えていきます。
単に「自分がわかっている」だけでは、授業はできません。
「学生にどう伝えるか」まで考える必要があります。
これは、日本語教師になって実際に授業をするようになって、強く感じたことです。
授業前の準備も大切
教案を作る以外にも、授業前にはいろいろな準備をします。
例えば、
「この文型は、学生にとってどこが難しいだろう?」
「この単語は、どう説明したらわかりやすいだろう?」
「この活動なら、学生が実際に日本語を使ってくれるかな?」
などを考えます。
必要に応じて、授業で使う教材や資料を作ることもありました。
特に初めの頃は、何が起こるかわからないので、かなり多めに準備していました。
でも、経験を積むと、少しずつ「ここまで準備しておけば大丈夫」という感覚がわかってきます。
また、以前作った教案や教材が残っていくので、毎回ゼロから作る必要もなくなっていきます。
私の場合、最初は何日もかかっていた教案作成が、慣れてくると1〜2時間程度でできるようになりました。
教案や教材が少しずつ蓄積されていくことも、経験を積むメリットの一つだと思います。
授業は「教案通りに進める」だけではない
教案をしっかり作っていても、実際の授業では予定通りに進まないことがあります。
「ここは簡単だろう」と思っていたところで学生がつまずいたり、反対に「ここは難しいかな」と思っていたところを、意外と簡単に理解してくれたりすることもあります。
予想していなかった質問が出てくることもあります。
最初の頃は、そうしたことがあると焦ることもありました。
でも、経験を積むにつれて、学生の反応を見ながら授業を調整することも、日本語教師の大切な仕事だと感じるようになりました。
私は、学生の反応が想定と違ったときも、それを「失敗」とはあまり考えていません。
「そういうところでつまずくんだ!」
「そんなふうに考えるんだ!」
と、新しい発見になることもあります。
むしろ、毎回違う反応が返ってくるところに、日本語教師のおもしろさがあると感じています。
クラス内のレベル差にも対応する
日本語学校で授業をしていて、難しいと感じたことの一つが、クラス内のレベル差です。
同じクラスでも、理解するスピードには違いがあります。
全員に同じ問題、同じ質問をしているだけでは、簡単すぎる学生もいれば、難しすぎる学生も出てきます。
そういうときに私は、少し難しい問題を別に用意しておいたり、学生によって質問の内容を変えたりしていました。
例えば、早く問題を終えた学生には、もう一段階難しい問題を出す。
反対に、まだ理解できていない学生には、別の例を出してもう一度考えてもらう。
一つの授業の中で、学生の様子を見ながら調整することが必要になります。
授業後には「振り返り」をする
授業が終わったら、それで仕事が終わりというわけではありません。
私は授業後に、振り返りをするようにしていました。
例えば、
「この説明はわかりにくかったな」
「この活動は思ったより盛り上がった」
「ここは時間をかけすぎた」
「この質問には、別の例文を用意しておけばよかった」
などです。
そして、気づいたことを教案に書き加えたり、次回の授業に反映したりします。
こうして少しずつ教案を修正していくと、以前よりも授業がやりやすくなっていきます。
日本語教師は、授業をするたびに少しずつ自分の授業を作っていく仕事でもあるのだと思います。
授業以外にもさまざまな仕事がある
日本語教師の仕事というと、授業や教案作成を思い浮かべる方が多いと思います。
でも、実際には授業以外にもいろいろな仕事があります。
私が日本語学校の非常勤講師として経験したのは、次のような仕事です。
採点
テストや課題などの採点をします。
採点をしていると、学生たちのつまづきやすい箇所などがわかります。
宿題チェック
学生が提出した宿題を確認します。
間違いをチェックするだけでなく、「どこがまだ理解できていないのか」を知る機会にもなります。
自分が授業を担当した文型の宿題チェックで、特に間違いが多かったりすると、自分の授業の反省点が多く見つかったりもします。
出席確認
学生の出席状況を確認します。
これは学生のビザに関わるものなので、いつも慎重に丁寧に確認しています。
教材作成
授業で使用する教材や資料を作ることもあります。
教材は一度作ると、何度も使えます。
教師同士の情報共有
他の先生と学生の様子を共有したり、授業について打ち合わせたりすることもあります。
私は非常勤講師でしたので、学校にいない時間が多かったため、情報共有は丁寧にしっかりするようにしていました。
テスト監督
テストの監督を担当することもありました。
学生の中にはカンニングしてはいけないということを知らなかったり、テスト終了後にも書き続けていたり、日本のルールを伝える機会でもありました。
学校行事
学校によっては、学校行事に参加することもあります。
行事前になると、普段の授業がさまざまな行事の準備になることもあります。
学生の普段の学習の集大成を見られるのも、日本語教師のやりがいの一つです。
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このように考えると、日本語教師は「授業をする人」というだけではなく、学生の学習をさまざまな面から支える仕事でもあることがわかります。
ただし、ここは学校や雇用形態によってかなり違います。
私の場合、非常勤講師だったため、成績処理や学生との正式な面談、生活相談などは担当していませんでした。
常勤講師がどこまで担当するのかについては、学校によっても異なるため、求人を見るときには仕事内容を確認することをおすすめします。
学生から相談を受けることもある
授業以外で学生と関わる中で、相談を受けることもあります。
私自身も、これまで学生からいろいろな相談を受けてきました。
勉強についての相談はもちろん、日本での生活についての相談や、恋愛の相談までありました。
日本語教師にとっては、学生の日本語力だけではなく、「一人の人」として学生と関わる場面もあります。
だからこそ、学生との距離感はとても大切です。
親しくなった学生から個人的な連絡先を聞かれたり、学校の外に一緒に出かけようと誘われたりすることもあります。
私が働いていた学校では、そうしたことは禁止されていました。
学生に親身になることと、プライベートで親しく付き合うことは別です。
「学生のために相談に乗る」ということと、「何でもしてあげる」ということも違います。
日本語教師として学生と良い関係を築きながらも、教師として守るべきルールや適切な距離感を保つことは、とても大切だと感じました。
日本語教師をしていて嬉しかったこと
もちろん、大変なことばかりではありません。
私が日本語教師をしていて一番嬉しいのは、やはり学生の成長を見ることです。
最初は「あいうえお」もわからなかった学生が、卒業する頃には、日本語で自分の気持ちを伝えられるようになる。
その姿を見ると、本当に感動します。
また、私は話すのが遅いことを、自分では少しコンプレックスに感じています。
ところが、学生からは、「先生の日本語は聞き取りやすい」と言ってもらうことがありました。
自分では短所だと思っていたことが、学習者にとっては長所になることもある。
これは、私自身にとっても嬉しい発見でした。
ほかにも、学生が私の誕生日をお祝いしてくれたことがあります。
長く日本語教師をしていると、以前担当した学生の兄弟が入学してくることもあります。
「あの学生の弟(妹)なんだ!」と気づくと、長くこの仕事を続けてきたからこそのつながりを感じます。
こうした学生との出会いや成長を見られることは、日本語教師の大きな魅力だと思います。
日本語教師は「日本語を教えるだけ」の仕事ではない
ここまで紹介してきたように、日本語教師の仕事は、単に日本語の文法や言葉を教えるだけではありません。
授業の前には、教案を作る → 教材を準備する → 学生がつまずきそうなところを考えたり、
授業中には、 学生の反応を見る → 理解度に合わせて説明を変える → 時間を調整したり、
授業後には、 授業を振り返る → 教案を改善したりしています。
そして、授業以外にも、採点・宿題チェック・出席確認・教材作成・教師同士の情報共有・テスト監督・学校行事など、さまざまな仕事があります。
さらに、学生から勉強や生活について相談を受けることもあります。
私自身、実際に日本語教師として働いてみて、「日本語を教える」という仕事の奥深さを感じました。
最初の頃は、教案を作るだけでも何日もかかりました。
でも、経験を積むにつれて少しずつ授業の組み立て方がわかるようになり、自分なりの教え方も見つかっていきました。
そして何より、学生ができるようになった瞬間に立ち会えることは、大きなやりがいです。
これから日本語教師を目指す方は、ぜひ「日本語を教える仕事」だけではなく、学生の成長を支える仕事でもあるということを知っておいてほしいと思います。
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私自身の日本語教師としての経験については、以下の記事で、非常勤講師という働き方を選んだ理由や、コロナをきっかけに日本語教育の仕事の幅が広がっていった経緯についても紹介しています。

また、日本語教師には、日本語学校以外にもさまざまな働く場所があります。
「日本語教師になったら、どんなところで働けるの?」と思った方は、以下の記事もぜひ読んでみてください。


